トレーニングコンセプト

ドイツにおける判断とゲームインテリジェンス

判断を伴ったテクニックとゲームインテリジェンス

ドイツで感じたテクニックに対する評価の違いでも書きましたが、僕は日本で反復練習を繰り返してテクニックを磨き、ドイツやチェコの所属チームの中でも高いテクニックレベルを身につけていたつもりでしたが、実際には僕よりもボール扱いで劣ると思っていたチームメイトたちのほうが効果的なプレーをしていたと思います。

僕は相手選手がいない反復練習で“柔らかいタッチをする”、“きれいにボールを止める”ということでできる気になっていて、まさにテクニックという手段が目的となっていました。
試合の中で効果的なアクションを行うためには戦術的な判断を伴う必要がありました。

サッカーIQなどとも言われますが、一つの局面の中で最適な選択肢を選ぶことができるゲームインテリジェンスも高めていかなければ、せっかく身につけたボール扱いのスキルを試合の中で効果的・効率的なアクションとして活かすことはできません。

フィジカルにも必要な戦術的判断

これはテクニックだけでなくフィジカルについても言えることですが、いくら持久力やスピードがあってもいつどこに走るのか正確な判断ができていなければ、なかなかボールに触れることもできずにがむしゃらに走り回るだけになるかもしれません。

データ上、リーグが上がればフィジカルレベルもアップするようにフィジカルは大事な要素と言えますが、1部から4部リーグまでの平均値の差はほんのわずかです(下図)。
持っているフィジカルという手段をゲームで効果的・効率的に使うためには、さまざまな状況で的確な戦術的判断を下す能力、ゲームインテリジェンスが必要になります。

30m走の平均値     ※ ドイツの指導者講習会 2009年

ブンデスリーガ1部 4,08 秒(最も早い選手で3,80 秒)
ブンデスリーガ2部 4,12 秒
3部リーグ 4,19 秒
4部リーグ 4,29 秒

うした判断力の不足をカバーするためにボールを使わないハードな走りのトレーニングを行うという選択肢もありますが、ボールを使いながらのほうが楽しいですよね
僕はドイツやチェコでもサッカーで必要とされるフィジカルのトレーニングを経験しましたが、日本の中学・高校時代に味わった厳しい走りのトレーニングのほうがはるかにきつかった思い出があります。

とは言っても、近代サッカーでは選手たちのフィジカルが向上し時間やスペースが減少していると言われています。そういった状況を戦術的な判断によって効果的・効率的に打開しフィジカル的に優れた相手にも勝てるところがサッカーの面白いところでもあります。

判断が起こるプロセス

サッカーの局面では以下のようなプロセスの中に”判断”が含まれていて、
多くの場合、意識する間もなく行われています。

  1. 状況把握・認知(ボール、ゴール、味方、相手の位置などを感覚器官により認知する)
  2. 予測 (入手した情報から次に起こりうる状況を予測する)
  3. 判断 (選択肢の中から行動を選択する)
  4. 実行 (テクニック・フィジカルを用いて選択した判断を実行する)

上記プロセスはまず情報を収集する状況把握・認知から始まりますが、サッカーでは情報収集の90%以上は視覚から行われていると言われています。
まず目で見て情報を取り入れ、脳で状況を素早く正確に”把握・認知”することが、相手を上回る”予測”と的確な”判断”につながります。

状況把握・認知・予測・判断”ゲームインテリジェンスサッカーIQに当たり、このレベルが高い選手は局面において最適な選択肢を選ぶことが可能になります。

また、人によって選択肢を判断して他の情報を遮断するまでの時間が異なります
例えば、フォワードタイプの選手はペナルティエリア内でシュートを撃つという判断をする時、中盤の選手よりも早い段階で他の情報を遮断し、集中して選択肢の実行に移します

逆に、中盤タイプの選手は周囲の情報をすぐに遮断することなく取り入れ続け、短い時間単位の中でも判断の変更を行い正確に実行することができます

ドイツ指導者講習会 スポーツ心理学者 Dr. Oliver Hönerの研究

どうやってゲームインテリジェンスをトレーニング?

上記の4つの要素は一瞬のプロセスの中で結びついているものなので、ある一つの要素だけを切り離して改善するのではなく、状況把握から実行までを素早く的確に行えるようにトレーニングする必要があります
一定の動作を繰り返すのでなく、状況変化が生まれるオーガナイズにより自分の目で見て判断して実行する複合的なトレーニングをすることです。

反復形式の基礎練やただ単にがむしゃらに走るトレーニングは上記のプロセスから”実行(テクニック・フィジカル)”だけを切り取ったトレーニングになります。

一定レベルのテクニックを習得できたのならば(小学生でも)単純な反復練習のようにわかり切った動きを繰り返すのではなく、”状況把握・予測・判断”となるゲームインテリジェンス”実行”を同時にトレーニングすることは可能ですし、必要です。

具体的に言えば、ゲーム形式や少ない人数でもディフェンダーのいるトレーニング、小学生であれば少人数のゲームや基本テクニックを学ぶ場合でも動く障害物を入れることにより切り離されたテクニックだけでなく判断を伴った実戦で使えるテクニックを学んでいくことができます。

”実行”だけを切り離したトレーニング

  • 一定間隔で置かれたコーンをドリブルでかわす
  • 二人組の基礎練や対面パス
  • リフティング
  • 単純なランニング

戦術的な判断を含めた複合的なトレーニング

  • 動く障害物(他の選手)をドリブルでかわす(例 Tr1
  • 動く障害物(ディフェンダー)相手にパスをつなぐ(例 Tr8
  • ゲーム形式

複合的なトレーニングは反復練習と比べてさまざまな状況が生まれるので、指導者の観察力やコーチング、練習のオーガナイズ(設定)も重要となりますが、それもコーチの役割ですし楽しいところでもあります。

また、複合的なトレーニングは同じ動きの繰り返しを行うわけではないので、短期的な視野で見れば反復練習と比べると習熟度が遅いと感じるかもしれませんが、最終的には僕がドイツに行ってからやっておけばよかったと思うようにゲームインテリジェンスとともに身につけていくことができるので我慢強く取り組んでいきましょう。

ドイツで感じたテクニックに対する評価の違い 僕がドイツに行って感じたことの一つですが、日本とは「テクニック」や「サッカーがうまい」という言葉の捉え方が全く違っていたというこ...
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