育成コンセプト

9歳までは3対3のミニサッカー・リーグ戦無し【ドイツサッカー協会の新たな育成改革】

ドイツサッカー協会新たな育成改革として、2019年7月から11歳以下のカテゴリーにミニフースバルと呼ばれる2人制や3人制、5人制の試合形式を導入することに決定しました
これまでU-11までは7人制(U-12/U-13は9人制、U-14/U-15から11人制試合が行われていましたが、今後、攻撃方向にミニゴールを2つずつ置き、合計4つのミニゴールを使った2対2や3対3、5対5が行われることになります。

W杯2018の惨敗と選手育成の見直し

ドイツ代表は10年越しの育成改革により2014年ワールドカップ・ブラジル大会で久しぶりの優勝を果たしましたが、2018年のワールドカップ・ロシア大会では初のグループステージ敗退を喫し(1勝2敗)国中で議論が巻き起こりました。

ドイツサッカー協会関係者やエキスパートは、代表チームの過度のボールポゼッションドリブルで打開できる選手やゲームインテリジェンスを備えた創造性あふれる選手の不足を指摘しました。
これまでもドイツサッカー協会は各年代の育成概要のなかで、今では行われることが少なくなったストリートサッカーの要素少人数狭いフィールド自由な発想)をチーム練習に取り入れることを推奨していましたが、反映しきれていなかったのかもしれません。

また、幼少期に出場機会に恵まれなかったり試合中にボールに関わる時間が少なかったりしてサッカーの楽しさを理解する前に途中で辞めてしまう子どもの数もドイツサッカーの将来の懸念材料となりました。実際に小さい子供の7人制の試合となるとボールコンタクトの80%が2~4人の特定の選手に偏ってしまうそうです(バイエルン州サッカー協会より引用)。残りの選手はボールの後を追いかけるかフィールドの端っこで外を眺めているだけになれば成長する機会も楽しむ機会も減ってしまうでしょう

こうしたさまざまな状況を根本的に改善するために、ドイツサッカー協会や地域サッカー協会が主導となって少人数制の試合形式(ミニフースバル)が導入されることになりました。

  • 過度のボールポゼッション
  • ドリブルで打開できる選手の不足
  • ゲームインテリジェンス創造性の不足
  • 子どもの出場時間ボールに関わる時間の改善

10の地域サッカー協会でテスト段階

ドイツサッカー協会には21の地域サッカー協会(州や州を区切った地域を管轄)が所属していますが、そのうち10の地域サッカー協会がテスト段階として2019年7月から11歳以下にミニフースバルを導入することに決定しました。これら10の地域サッカー協会以外にバイエルン州サッカー協会では数年前から一足先に少人数制での取り組みが行われていました。

2019年7月からテスト段階に入った地域サッカー協会:
Baden, Brandenburg, Bremen, Hessen, Mecklenburg-Vorpommern, Mittelrhein, Sachsen, Südbaden, Südwest, Wüttemberg

   協会の育成部は少人数制サッカーによって
   選手個々の創造性やゲームインテリジェンスを発展させたい。
                          バイエルン州サッカー協会

地域クラブの理解設備投資(ミニゴールの数)などの問題もあり、ある地域は特定の年代カテゴリーで試したり、ある地域はリーグ戦と並行して試したりと地域によっても取り組み具合は異なるようです。ミニフースバル導入はクラブに対して強制ではありません。

これまでの試合形式: ~U-11 7対7(GKあり)

2019年7月以降の試合形式:

  • U-6/U-7   2対2か3対3(GKなし)、4つのミニゴール
  • U-8/U-9   3対3(GKなし)、4つのミニゴール
  • U-10/U-11 5対5か7対7(GKあり/なし)

ミニフースバルとフニーニョ

狭いフィールドでの少人数のゲームは各選手がボールに関わる時間を増やし、ドリブルを中心としたテクニックや認知・判断と言ったゲームインテリジェンスを磨くことができます。実際に7対7と比べて4ゴールの3対3のほうが1人あたりのドリブルは5倍、パスは2倍多くなるというデータが出ています(ドイツサッカー協会指導者講習会より引用)。また7人集まれなくても少人数でチームを組んで試合に参加することができます。

ドイツで新たに導入される4つのミニゴールを使った3対3Mini-Fußball(ミニフースバル)と呼ばれ、直訳するとミニサッカー(ミニフットボール)となります。このミニフースバルの元となり、ほぼ同義語となっているのがFUNiño(フニーニョ)です。

FUNiño(フニーニョ)は英語のFun(楽しさ)とスペイン語のNiño(子ども)から作られた造語で、1985年にドイツ人のHorst Wein(ホルスト・ヴァイン)氏によりゲームモデルが発表され、それ以降も子ども用にさまざまな改良が加えられてきました。
子どもだけでなく育成年代や大人のゲームインテリジェンスを向上するためのトレーニングとして40以上ものバリエーションがあり、FCバルセロナでもこのようなトレーニングが取り入れられています。

フニーニョ(ミニフースバル)の基本ルールはこちら ⇩⇩⇩

Tr53) フニーニョ FUNiño(4ゴールの3対3ミニサッカー)メニューの説明 フニーニョ(FUNiño)は英語のFun(楽しさ)とスペイン語のNiño(子ども)から作られた言葉で、ドイツ人のHor...

ホルスト・ヴァイン氏はホッケーの元ドイツ代表選手でドイツとスペインのホッケー代表チームの監督も務めましたが、サッカー指導者のための著書も多数出版して世界中で翻訳されています。残念ながら2016年に亡くなりました。

    考えないでサッカーをプレーするのは、
    狙いを定めずにシュートを打つようなものだ。
                         ホルスト・ヴァイン

  1. 少人数でもチーム活動が可能
  2. 全ての選手に出場時間の確保
  3. たくさんのボールコンタクト(7人制より60%多い
    ドリブルは7人制の5倍、パスは7人制の2倍
  4. 多くのゴールチャンス=成功体験
  5. 守備の工夫、強化
  6. 特殊ルールでゲームインテリジェンス向上
  7. ベンチ要員なし、ポジション固定なし

新たな試合形式・ルール

7人制に代わりに2対2や3対3、5対5のミニフースバルが行われることになりましたが、地域や年代によってはリーグ戦は行わず、複数のチームを集めた1dayカップフェスティバルが定期的に行われます。これにより子どもたちがコーチや大人の勝利至上主義の犠牲にならず、子どもたちは過度のプレッシャーを感じずにサッカーを楽しむことができます。

また、審判もつけずに子どもたちのセルフジャッジで試合が行われます(必要であればコーチが仲裁に入ります)。ドイツではすでに2007年からFair Play-Liga(フェアプレーリーグ)と呼ばれる審判なしの試合が9歳以下のカテゴリーで行われています。子どもたちは自分たちの試合を自分たちの責任で管理することで自立していきます。

だからと言って勝ち負けにこだわらないわけではありません。複数のチームが集まり複数のフィールドがあれば1試合ごとに勝ったチームは上のフィールド(チャンピオンズリーグ)、負けたチームは下のフィールドに移動するなど(例:下図)試合ごとにチームや個人で勝ち負けと向き合う機会が生まれます。

  1. リーグ戦廃止、1Dayカップやフェスティバル
    → 過度のプレッシャーから解放、サッカーを楽しむ
  2. 審判なし、セルフジャッジ
    → フェアプレーや自立を学ぶ
  3. チャンピオンズリーグルールで勝ち負けを経験
Fair Play-Liga 9歳以下の試合は審判なし【ドイツのフェアプレー事情】 バイエルン・ミュンヘン監督や日本代表初代外国人コーチを務めたドイツ人のDettmar Cramer(デットマール・クラマー)さん...

U-6/U-7

これまでのルール:7人制(35x25m)、20分ハーフ

  • 2対2か3対3キーパーなし
  • 攻撃方向にミニゴール2つ(合計4つのゴール
  • フィールドの大きさ(縦20~28mx横16 ~22m)
  • 各チーム最大5人(交代要員は2人まで
  • 得点はセンターラインを越えてからのシュートのみ(2対2)
  • 得点はシュートゾーンからのシュートのみ(3対3)
  • キックインもしくはドリブルからリスタート(スローインはなし
  • 得点が決まるごとに両チーム1人ずつ選手を交代する
  • 1試合10分
  • 1Dayトーナメントでは1チーム最大7試合まで(推奨)
  • チャンピオンズリーグルール

U-8/U-9

これまでのルール:7人制(40x35m)、20分ハーフ

  • 3対3キーパーなし)、フィールド(縦26~28m x 横20~22m)
  • 攻撃方向にミニゴール2つ(合計4つのゴール
  • もしくは5対5、フィールド(縦40m x 横22~25m)
  • 5人制の場合、キーパーなしの4ゴールか、少年用ゴールを使ってキーパーを入れる
  • キックインもしくはドリブルからリスタート(スローインはなし
  • 1試合12分
  • ドイツサッカー協会は3人制を推奨
  • チャンピオンズリーグルール

U-10/U-11

これまでのルール:7人制(55x35m)、25分ハーフ

  • 5対5U-8/U-9を参照)
  • もしくは7対7、フィールド(縦55 x 35m)、少年用ゴール2つでキーパーあり
  • 4チーム総当たりで1試合12分ハーフ(推奨)
  • 2チームの場合は15分x4本(推奨)
  • 試合に出ない選手は空いているスペースで2対23対3を行う
  • 7人制はスローインあり、5人制以下はキックインもしくはドリブルからリスタート
  • チャンピオンズリーグルール

    新たな試合形式はコーチや親の影響から離れ、
    子どもたちの自立を育みます。         ドイツサッカー協会

 

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