育成コンセプト

Fair Play-Liga 9歳以下の試合は審判なし【ドイツのフェアプレー事情】

バイエルン・ミュンヘン監督や日本代表初代外国人コーチを務めたドイツ人のDettmar Cramer(デットマール・クラマー)さんは日本サッカーの父とも呼ばれ、「サッカーは人生の縮図である。人間として成長する場である」と語りました。

サッカーには常に勝ち負けがついてきますが、だからと言って勝つために何をしてもいいわけではありません。文書化された基本的な17の競技ルールを守るだけではなく、試合を円滑に進め不要なケガや事故を防ぐためには、対戦相手に対してのリスペクトやフェアプレーの精神が必要不可欠です。リスペクトフェアプレーの精神は平等にサッカーする権利を根底から支えるものであり、ピッチ内だけでなくピッチ外の日常生活にも当てはまることでしょう。

ドイツサッカー協会はサッカーを通してリスペクトフェアプレーの精神を普及し、暴力人種差別を撲滅するためにさまざまな取り組みを行っています。

    サッカーは子どもを大人にし、大人を紳士にするスポーツだ。

デットマール・クラマー    

フェアプレーメダル

ドイツサッカー協会は1996年から、プロ・アマを問わず選手や審判、監督やチーム関係者を対象に毎年フェアプレーメダルの授与を行っています。ピッチ内外の言動を評価され、2012年には元ドイツ代表のミロスラフ・クローゼが2度目の受賞、2013年にはバイエルン・ミュンヘンで3冠を達成したユップ・ハインケス監督、2016年には当時アイントラハト・フランクフルトのニコ・コバチ監督などが受賞しています。

ニコ・コバチ監督は2015/16シーズン途中から降格に危機にあったフランクフルトの指揮を執り、ブンデスリーガ1部残留をかけて2部のニュルンベルクと入替戦で対戦しました。ホームのファーストレグを1-1で終え、アウェイのセカンドレグで1-0で勝利したフランクフルトは1部残留を果たしましたが、コバチ監督は残留を決めて喜ぶ自チームよりも先に負けて涙しているニュルンベルクの選手たちを慰めにいきました

    私は、彼らがグランドに倒れ込んでいる姿を目の当たりにしました。
    スポーツマンなら彼らの心境がよくわかります。

ニコ・コバチ監督     

2017/2018シーズンには当時ブンデスリーガ2部のSSVヤーン・レーゲンスブルクに所属していたMarco Grüttner(マルコ・グリュットナー)選手がフェアプレー賞プロ部門のメダルを授与されました。レーゲンスブルクはボーフムに0-1でリードされていましたが、後半45分に主審はレーゲンスブルクのコーナーキックを指しました。しかしボールの近くにいたグリュットナー選手は試合に負けているにもかかわらず、コーナーキックの判定を撤回してもらいました。

    本能的なことでした。
    多くの場合、ただ単に真実を言うことは大事だと思います。

   マルコ・グリュットナー     

間違って与えられたPKを拒否する選手たち

2014年のブンデスリーガ、ヴェルダー・ブレーメン対1.FCニュルンベルクの試合は両チームとも残留争いの真っただ中でした。この試合で当時ヴェルダー・ブレーメンに所属していた元ドイツ代表アーロン・ハント選手はペナルティエリア内で倒され、主審はPKの判定を下しました。ハント選手を倒したニュルンベルクのピノラ選手も頭を抱えていました。しかし、ハント選手は主審と短い会話をすると、主審はPKを取り消しゴールキックの判定に変更しました。ハント選手によると、ファウルではなく体をぶつけようとしたらピノラ選手が距離を取って離れたため一人で倒れてしまったそうです。試合はブレーメンが2対0で勝利しました。

同じようなことは2005年のブレーメン対アルミニア・ビーレフェルト戦にも起きました。当時ブレーメンに所属していたクローゼ選手はPKを獲得しましたが、主審と話してPKの判定を撤回してもらいました。クローゼ選手はドイツ代表となりワールドカップ得点王にも輝きました。

    私は自分の中で一瞬葛藤がありましたが、
    残留争いだからと言ってあんな形で勝ちたいとは思いませんでした。

アーロン・ハント    

Fair Play-Liga 9歳以下は審判なし

2005年、ドイツの9歳以下の試合で主審の判定を発端に親同士が口論となり殴り合いに発展しました。現場に居合わせたRalf Klohr(ラルフ・クローア)氏は親として、チームのコーチや育成部長として長年子どもたちのサッカーに携わっていましたが、この現状を目の当たりにして手を引くか何かを変えるかの選択に迫られました。

クローア氏は子どもの試合を取り巻くリスペクトのない大人の行動を抑えて子どもに自由や静かな環境を与えるために、審判をつけないなどの3つのルールを取り入れたFair Play-Liga(フェアプレーリーガ)を考案しました。フェアプレーリーガは2007年にアーヘンという地域で12のクラブとともに発足し、2014年以降はドイツサッカー協会の推薦によりドイツ全土に広がりました。2018年からは9歳以下の公式戦に適用され、多くの地域サッカー協会では11歳以下のカテゴリーにも導入しています。Fair Play-Ligaより引用

1)レフリールール

9歳以下カテゴリーには主審をつけません。スローイン、ゴールキック、コーナーキック、ファウル、得点などプレーする子どもたちがすべて判定下します。子どもたちは自分の行動や判定に対して責任を負うことを学んでいきます。どうしても選手たちが判定できない場合のみ、両チームのコーチの話し合いにより判定が下されます。

10歳から主審が入りますが、スローイン、ゴールキック、コーナーキック、ファウルは引き続き子どもたちの判定に委ねられます。

2)指導者のルール

両チームのコーチは別々のベンチに分かれるのではなく、タッチライン中央のコーチングゾーンに一緒に入ります子どもたちのお手本として振る舞い、必要最低限のコーチングを行います。

3)ファンのルール

親や家族を含めた観客は、フィールドから約15m離れたファンゾーンから応援します。応援する声はOKですが、子どものプレーを妨げるような野次や怒鳴り声は禁止されています。

    レフリールールによって、
    子どもたちは問題を解決する力や判断力を養うことができます。

   ラルフ・クローア     

フェアプレーリーガを経験した子どもたちは、将来、選手や指導者、チーム関係者、審判、ファンとしてリスペクトフェアプレーの精神を普及してくれるでしょう。

フェアプレーカード

2018年の秋、これから試合をする子どもたちから観客席の親にフェアプレーカードが配られました。長い時間子どものスポーツに関わる親は愛情や情熱とともに子どもを応援しますが、時には過度の期待が子どものプレッシャーにつながってしまいます。子どもは小さなプロではありません。大人の期待どおりに毎回プレーできるわけでもありませんし、将来プロになれるかどうかもわかりません。多くの子どもはそんなことも考えず純粋にサッカーを楽しんでいます。

Fair Play Card

お父さんお母さん、フェアーに振舞って!

  1. 口論するんじゃなくて感謝して
  2. 怒るんじゃなくて楽しんで
  3. 批判するんじゃなくて褒めて
  4. 結果よりも経験
  5. 怒り狂うんじゃなくてお手本になって

そうすればサッカーは楽しいよ!

ドイツサッカー協会の親に対する質問

  1. あなたはピッチ外からネガティブなコメントを発してしまいますか?
  2. あなたは自分の子どものパフォーマンスに対して不満に思うことが多いですか?
  3. 誰もがプレーする権利があるのに、あなたの子どもがベンチにいたら腹立たしいですか?
  4. あなたはチームの先発メンバーや監督の決定に対して不満に思うことが多いですか?
  5. 相手チームがミス(パスミス・オウンゴールなど)をしたら喜びますか?
  6. あなたの子どもが相手選手に対してファウルをしたら褒めますか?
  7. あなたの子どもがあなたのアドバイスを活かせなかったら怒りますか?
  8. あなたの子どものパフォーマンスが悪かったら子どものせいだと思いますか?
  9. あなたは試合後に自分の子どもの悪かったプレーを本人にすべて伝えますか?
  10. 会場でよく誹謗中傷することを口にしてしまいますか?

”いいえ”が多いほど、試合会場でのあなたの振る舞いはフェアーです。

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