ドイツ代表は早い段階で敗退しただけでなく、試合の内容も悪いものでした。
さらにチームの平均年齢はとても高く、期待できる若手選手も当時ほとんど見当らなかったことから選手育成改革に着手しました。
以下のような取り組みが改革として行われました。
- ドイツ全土をカバーするトレセン制度の導入
- プロクラブでの育成アカデミー導入
- エリートスクールの導入
- U-17とU-19のブンデスリーガの導入
- 育成年代の代表チームの強化
- 指導者養成と育成
トレセンでのトレーニング
10歳から15歳までの約1万5千人が選抜され、自チームでのトレーニングとは別に週一度のトレセンに参加することができます。約1200人の指導者が割り当てられています。
ドイツ全土に336ヶ所あり、トレーニングの目的や内容はドイツサッカー協会によって決定されます。
トレセンのトレーニングはあくまで個のスキルアップにフォーカスされていて、選手8人に対して指導者1人の割合になっているので、テクニックや戦術に関する詳細なアドバイスを選手に伝えることができます。
トレセンの指導者には、エリート選手育成を目的とする2週間半の講習に合格し資格を持つことが義務付けられています。
育成アカデミー
2001年にブンデスリーガクラブ、2002年にはブンデスリーガ2部のすべてのクラブにも育成アカデミー設立が義務付けられました。
アカデミー設立は、以下のような点でDFBやドイツサッカーリーグが定めた基準を満たさなければなりません。
- インフラ、グランド、セミナールームなど
- 指導者の数と質(ライセンスなど)
- スポーツ的、教育的、精神的、医学的な選手のケア
- 選手スカウト
エリートスクール
エリートスクールで週に数回、午前中にトレーニングを行うことにより、選手のトレーニング回数や時間を増やすことができました。2000年以前は週3・4回だったのに対し、現在は週6~8回以上に増えています。
U-17とU-19のブンデスリーガ
質が高いトレーニングだけでは選手をトップレベルに引き上げることは難しいでしょう。
プレッシャーの中で質の高い相手と継続的に試合経験を積む必要があり、U-19とU-17のトプレベルのリーグ戦が導入されました。
両カテゴリーとも3つの地域(3リーグ)に分けられて、それぞれのトップリーグがブンデスリーガと呼ばれています。各リーグには14チーム所属しており、年間ホーム&アウェイで対戦して順位を決めます。それ以外にもカップ戦などの公式戦も行われます。
育成年代の代表チームの強化
DFBはA代表と育成年代の代表チームの関係を強化し、サッカー哲学を発展させました。
育成年代の代表選手は、将来必要とされるゲームコンセプトや戦術の準備ができ、次の年代カテゴリーへの移行がスムーズになり、10代からA代表に選出される機会も増えました。
2014年のワールドカップ優勝メンバーの平均年齢が低く、各選手は各国のトップリーグですでに多くの経験を積んでいました。
指導者養成と育成
選手育成にとって指導者はカギとなる存在です。DFBは将来の見通しを立てて、指導者を養成し常にアップデートの状態にしています。
2001年には10歳から15歳までのエリート選手育成のための指導者ライセンスを導入し、トレセンやアカデミーではこのライセンス所持が義務付けられいます。指導者をアップデートするためのリフレッシュ講習会も定期的に行われています。
選手育成改革に踏み切り約15年に渡って新たな道を歩んできた結果、ドイツ国内だけでなく世界のトップレベルでも活躍できる若手選手を数多く育成することに成功し、24年ぶりにワールドカップ優勝のタイトルを再び手にすることになりました。
私は日本も適切な方法でこのような成果を収めることができると信じています。
日本サッカーに触れ合った経験から、日本には将来日本代表を世界のトップレベルに近づけることができる若い才能が数多くいることを知りました。
ベルント・シュトゥーバー
元ドイツサッカー協会 指導者養成責任者
元育成年代ドイツ代表監督